法律を知らなかったら罰せられない?(故意) 刑法38条3項

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事件例:東京地判平成14年10月30日
被告人はレーザー脱毛器の輸入販売業者から脱毛用機器の使用は
医師法に反しないと説明を受け、この機器を使用して継続的な営業を行い、
医師法違反で起訴されたが
「輸入元からは医師法に反しないと説明を受け犯罪を犯す意思はなかった」
と主張。

この主張が刑法第三十八条の「罪を犯す意思がない行為は罰しない」
という規定に当てはまり、当該被告人は無罪になり得るのか?

 

裁判例 東京地判平成14年10月30日
「πウェーブ」による脱毛も、そのレーザー照射により・・・火傷等の皮膚障害が発生する危険性を有し、・・・医学の専門知識及び技能がなければ、保健衛生上人体に危害を及ぼすおそれがあると認められるから、医行為に該当すると解されるところ、・・・被告人らにおいても、「πウェーブ」によるレーザー脱毛が医行為に該当することを基礎付ける事実自体の認識は、あったものと認められる。」
「被告人らに対し医師法に違反しない旨説明したという「πウェーブ」の輸入販売元側の担当者は単なる私人にすぎず、被告人らは厚生省等の関係機関に問い合わせをしなかったこと、当時、既に、厚生省がレーザー脱毛は医療行為に当たるとの見解を都道府県等に通知した旨の新聞報道がなされていたことなどからすれば、少なくとも、被告人らにおいて、違法性の意識を欠いていたことについて相当な理由があったということはできない。・・・したがって、被告人らが違法性の意識を欠いていたからといって、故意が阻却されることはない」

 

つまり「適法」だと信じていても「違法」である事を調べればわかるというレベルであれば
「罪を犯す意思がない行為は罰しない」という規定には合致しないと考えられ
被告人の故意は阻却されなかった。(知らなかったは基本通用しないと考えられる)

 

反対説

「違法性の意識不要説」(違法性の意識もその可能性も不要と解する説)
「制限故意説」(違法性の意識は不要だがその可能性は必要と解する説)
「厳格故意説」(違法性の意識が必要と解する説)等がある。

 

刑法38条3項
法律を知らなかったとしても、そのことによって、
罪を犯す意思がなかったとすることはできない。
ただし、情状により、その刑を減軽することができる。

 

事例まとめ

■法律の存在を知らないで、自己の行為が法律上許されていると誤信するケース
一般的に法律は公布により一般人の知りうるところとなっているから、
違法性の意識は誰にでもあると判断される。

法律の解釈を誤り、自己の行為が適法であると誤信する場合
誤った解釈をした経緯で違法性の意識の可能性の有無が判断。

■判決を信頼した場合
自己の行為と同一の事件についての判決を信頼した場合、
違法性の意識の可能性は無かったといえるが
最決H8.11.18では処罰できると判断

■公的見解を信頼した場合
官公庁等職員の判断に従った場合、
違法性の意識の可能性は無かったといえる

■私人の見解を信頼した場合
弁護士、学者の意見に従っても
違法性の意識の可能性が無かったとはいえない。

■私人の見解の例外
映画倫理委員会の審査を通過したために、
わいせつ物に当たらない適法な表現と
誤信した場合は「相当の理由」があるとされた裁判例がある。

 

 

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